うーん・・・天気が悪い。
今頃は梅雨が明けて一番いい時なのに。
29日は夜半から雨が激しく、朝方もまだ時折ザーッと降ってきたが、とりあえず4時前に出発して剣山荘をめざす。ここで早速お客様1名がリタイヤ。歩き方が論外。去年も来て同じように剣山荘で引き返させたお爺さんで、懲りないというか、まるでわかってない。
天候は変わらず、とりあえず一服剣めざすということで出発。けど着いたら雨が上がった。「じゃあ前剣まで行ってみますか。」ということで出発。大岩を過ぎ、鎖場を越えると東大谷側からの風の吹き上げがすごい。加えてまた雨も降ってきた。「今日はここまで!これ以上行ったらトムラウシになっちゃいます。」ということで前剣の頂上から引き返す。ところが、武蔵のコルまで下ってきて休憩していたら雨が上がり、急速に明るくなり、後立山の方も見えてくるではないか。青空までちらっと見えるようになり、この時は正直参った。こういうパターンが一番悩ましい。お客さんの中には「時間があるし、また登りましょうよ。」と言いだす方もいたが、しばらく様子を見た上で「急に天候が良くなってきてますが、岩場は濡れていて危ないです。下山します。」と宣言して下り始めた。「今まで3回チャレンジして3回とも雨で登れず、今回が4回目なんです。」というお客さんもいたりして、悔しそうに振り返る方もいたが、その後また雨が降り出したので納得したろう。
「引き返す勇気も必要だ。」とよく言うが、「客の顔色伺う方がもっと勇気がいる。」としみじみ思った。
剣沢小屋に戻ったら立山ガイドの多賀谷さんが「おー、帰ってきた帰ってきた。最近、雨降ってても頑張っちゃうガイドがいるからこっちもやりにくいんだよなあ。」と言ってたのでなんとなく救われた気持ちになった。
やはり尾瀬は人が多い。オーバーユース感は否めない。自然が疲れてる感じ。
登山者よりハイカーや観光客が圧倒的に多く、足回りも心もとない。普段からアスファルトやコンクリートの上しか歩くことがなく、駅の階段と家の階段ぐらいしか登ることのない人達が、慣れない山道や木道を歩けば転ぶ。この日も朝っぱらから救急車や消防車が鳩待峠めがけて上っていくので「なんだろな?山小屋が火事になったか?」と思ってたら、山ノ鼻に行く途中の木道でお爺さんが骨折したらしく、消防隊員に担がれていた。
尾瀬ではこの木道の踏み外しやスリップによる怪我・事故がとても多いそうだ。北アなどとはちょっと違って、生命の危険にまで及ぶことはない、表には出ない、小さな事故が頻繁にあるようだ。
次の日の谷川岳は天候が悪く、ガスと時々降る雨のため景色は全く見えず、ただ登っただけになってしまった。
ちょっと天候等の状況が悪いとすぐお客さんから「トムラウシのようにならないようお願いしますね~。」とか言われちゃうので参る。なにかと例の北海道大量遭難事故の話題が出る今日この頃で、お客さんもツアー会社もピリピリしてる。
映画「剣岳 点の記」が公開されたばかりということで俄然注目される長次郎谷ルートから長次郎になったつもりで剣岳をガイドしてきた。
7月の上旬で梅雨の真っ只中。この時期の雪渓はとても安定してていいのだが 問題は天候。朝出発時は霧雨が降っていたが、幸い時間とともに天候回復。青空の元、爽快な気分でというわけにはいかなかったが無事に登頂できた。
この雪渓、上部に行くに連れて傾斜が増してけっこう大変なのだが、明治の時代、柴崎芳太郎達の測量隊は貧相な装備でよく登ったなあとしみじみ感心しながら登った。
頂上目前のところで自分が「お客様、ここまで来ればもう大丈夫です。あとはお客様が先に登って下さい。」と言ったらお客様は「何を言ってるんですか。ここまでずっと水越さんと一緒に登ってきたではありませんか。水越さんが行ってくれないとあたし達は登れません。」といった会話が交わされたかどうかは定かではない。
下りは一般道の別山尾根ではなくて平蔵谷を下りた。こちらも雪渓が安定しているので別山尾根より全然早いし安全。のはずなのだが、お客様はちょいとビビリ気味。ショートロープで確保しながらのんびりと下った。