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今度の冬のインターハイのアルペンスキーは岩岳スキー場で行われることになってる。そのインターハイに先立って県の大会週間なども岩岳で行われる。来シーズンはなんだか大会漬けになりそうな予感。
スキー連盟などの偉い人達が視察に来るので少しは見栄えを良くしようということで女子スラロームのスタート付近の木を何本か切った。切った木はナラ。薪ストーブの薪にするには最高。今日はその切ったナラの木をいただきに軽トラでゲレンデを駆け上がって運び出す作業を行った。登りはいいのだが、木を載せてけっこうな斜度のゲレンデを下る時はかなりおっかない。ブレーキは踏みっぱなし。ブレーキが焼けて効かなくなったらこの世の終わりというスリリングな作業であった。
予定していた栂海新道は人数集まらず中止。代わりに八ヶ岳の仕事が入った。
台風が過ぎ去り、台風一過の青空のもと秋の爽やかな風に吹かれながら気持ちいい稜線歩きが楽しめるかと思ったがとんでもない。天気悪し。ほとんどカッパ着っぱなしー。展望もほとんどなしー。おまけに雷も鳴るしー。夕べは赤岳頂上小屋に泊ったのだが、夜中、ゴロゴロと雷が鳴り出したと思ったらいきなりストロボの百倍の明るさと同時にドカーンと至近距離に落雷。どうやらすぐそばの赤岳の頂上のどこかに落ちたらしい。地響きがした。これですっかり目が覚めてしまった。
翌朝(今朝)出発してすぐ、天望荘に向う急な下りで自分のすぐ後ろを歩いていたお客様がスリップしてごろんと一回転。そのさらに後ろのお客様の悲鳴でパッと振り返りとっさに止める。危なかった。止めなければそのまま加速度が付いて下まで転がって大惨事になってただろう。昨日からの歩き方を見て「この人アブナイ」とマークしてたので今日は最初から自分のすぐ後ろを歩かせたのが正解だった。以降横岳を通過するまでそのお客様にスリングを巻き付けて拘束。猿回しのごとく、囚人のごとくロープでつないで移動する。横岳の手前あたりから雨本降り。あーあって感じ。
天候良し、お客様の体調良し、ガイドの体調まあまあ、ということで好条件が揃い、北鎌尾根を完登することができた。しかも予定より早く15時前に槍の頂上に抜けることができた。この日の北鎌尾根はラッシュで、我々の後ろにも続々とパーティが続いた。そして槍の頂上も満員御礼。槍ケ岳山荘はもっと満員御礼。ということで殺生ヒュッテにエスケープ。あの喧騒が嘘のような静かな小屋であった。
今回のアプローチは上高地~槍沢~水俣乗越~天上沢~北鎌沢右俣。他にも湯俣からと貧乏沢からと2つのアプローチコースがあり、体力度・困難度・交通の便などでそれぞれ長所短所があるが、それらを総合してみるとこの水俣乗越からのアプローチが一番楽であると自分は思っている。
天狗の腰掛の手前では、お客さんが腐った木の根を掴んで滑落しそうになるという「九死に一生スペシャル」があったが、タイトロープでビレーしながらの行動だったのでロープを持っていた左手にちょっとショックが来ただけで特に問題はなかった。本人にとってはちょっと刺激が強かったらしく、「あー死ななくて良かった。」とか「あー命拾いした。」とか「あーやっぱり北鎌尾根ね。」とか盛んにいろんなことを言っておられた。
P12からP13付近は相変わらず岩が脆く、自分自身もこの日一番緊張を強いられた。部分的にタイトロープからスタカットに切り替えてお客様を引き上げ、P13でホッと一息入れているとお客様が「あそこにザックが落ちてる。」と言うではないか。確かにP12とP13の間の千丈沢側のルンゼにザックとその中身が散乱している。見た瞬間、「あーこれは誰か落ちたのかもな。」と思ったが、もしかしたら休憩の時にザックを落としてしまったのかもしれないし、こちらも先を急がなければならなかったのでそのままそこを離れた。しかし、昨日帰宅後にわかったことだが、やはりそれは事故であった。県警ヘリに収容されたのが昨日なので、我々が目撃した時にはまだそのザックの傍らに遺体があったことになる。遠くてわからなかったが。亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
北鎌平にある大岩には”ココはキタカマ平”と朱書きしてある。3年ぶりにここを訪れたのだが、だいぶ風雪風雨に叩かれて字が薄くなっていた。この文字は案内人組合の先輩であり、長いこと常駐隊の隊長なども歴任され、「北鎌の神様」と言われた故・勝野銀一さんが書いたものである。4~5年前、何者かが北鎌尾根上のあちこちに赤いペイントでマーキングをして問題になり、それを消す作業に出かける際にも「おい水越君、あそこの”ココはキタカマ平”という文字だけは消すなよ。あれは俺が書いただ。あれは冬にここを登ってきた野郎どもが唯一現在地を確認できる目標物なんだ。」と言っていた。生前、勝野さんは自分をよくかわいがってくれて、自宅に招かれて酒を飲みながら北鎌尾根や裏銀座のこと、猟師をやっていた頃の話しや数々の救助活動の話しを聞いたり、また自分の鉄砲で撃って獲ってきた猪の肉などをお裾分けしてくれたりした。そんな生前の勝野さんを思い出しながら歩いていたら妙に感傷的になってしまった。お客さんや他のパーティもいたので声には出さなかったが、心の中で「おーい勝野さーん、来たぞぉー!」と叫んでいた。
北鎌尾根はやはり大変なコースであるというのを再認識した。体調、装備、天候の全てがベストの状態でないと行ってはいけないコースであると思う。ちなみにロープを使用しているパーティは我々以外では見なかった。
ハハっ、また剣岳。今シーズン4回目でーす。去年から通算して何回行ってるんだろう。去年も「剣岳は俺の庭」と言っていたが、もはや俺の玄関って感じ。
山の上ではほんの少しではあるが秋が訪れはじめていた。
朝4時前に出発したのだが早々にトラブル発生。1時間ロスしてしまった。10時から雨の予報が出てたので焦っていたのだが、なんとか難所を通過し終えてから雨が降り出してくれた。ぎりぎりセーフ。今回はお客様の人数が多く、足並みもばらつきがあり、申し訳なかったが1名だけは剣山荘のところまでで引き返してもらった。前日も含めて歩き方を見ていると、とてもじゃないがその先の岩場はまともに歩けないと判断。たとえ歩けたとしてもすごく時間がかかってしまい、何時に帰れるかわからない。「もしどうしても登りたいのであればツアー登山ではなく、個人的にガイドを雇ってマンツーマンで行くようにした方がいいですよ。あなたの足ではこういう難しい山のツアー登山は無理です。」と厳しい言い方ではあるがアドバイスをして引き返させた。本人は悔しそうであったが、言うこっちの方も辛い。ちなみにその方は70歳オーバー。70を越えてるからどうのこうのということではない。最近は70以上の年齢の方は当り前のようにいる。そのこと自体は全く問題ないのだが、困ってしまうことは自分の脚力・体力・体調を自覚せず、むしろ過信をしてしまい、そして意地を張ってしまうことである。こういうのが一番困るし、遭難事故の元凶にもなっている。だけど、これからは高齢登山者が増加していくんだろうな。それに伴って事故も増えるんだろうなあ・・・