こっち方面の山は冬のB.C以来。ましてや夏は久しぶり。
秋雨前線が南下中で、昼頃からこの辺にさしかかるような予報。出発時はまだ曇りだったが、登るにつれ時折霧雨が降るようになってきた。そしてこの日は雷がくる確率が高かったので、出発の時から「早く行かなきゃ」という心理状態になっていたと思う。しかしそこでペースを早めようもんなら途端にお客様の息が上がり、バテバテになりかねないのでいつものようにゆっくりゆっくり歩く。
白馬大池のハクサンコザクラはまだ咲いていた。
霧雨が降ったりパーっと明るくなって陽射しが出たりを繰り返していたが、船越ノ頭を越え小蓮華岳を通過する頃ついに雷鳴が轟いた。雨も止むことがなくなり、「雷が近づいてきたらどこに避難しようか」を常に気にしながら進む。お客様には申し訳ないが、少しペースを早め、休憩の頻度も少なくして急いでもらう。
三国境から白馬岳頂上への最後の登りにさしかかる頃からは冷たい雨が本降りになり、「頼むから雷さん近づいてこないでくれ!もうちょっと待ってて!」と念じながら登る。皆夜行の寝不足も重なってかなり辛そうだったが、なんとか無事頂上に立ち、白馬山荘に転がり込む。
過去何度か雷では危険な目に遭っているので今回も少し早く歩いてもらったが、途端に「今日苦しかったのはペースが速かったからじゃ。」と文句が来る。皆の安全のためにペースを早めたのだが、なかなか理解してもらえない。場合によっては早く歩かないといけない時もあるのである。ヨーロッパなどでは【スピード=安全】という概念が確立されてるようだが、日本ではまだまだである。
夜行で来ていきなり標高1500mぐらいのところからスタートしてその日のうちに3000m級の山まで登るという日程の組み方も問題あるだろうが、基本的に体力不足の方が多いように思う。特に中高年層。高齢になればなるほど日頃のトレーニングが大事になってくると思うのだが、聞くと「山に登るのは3ヶ月ぶり。北アルプスは今シーズン初めて。」とかいう方がけっこういる。完全にナメてる。週に1回、近場の山でも行ければ最高だが、それができなければせめて1ヶ月に1回は山に行き、そして日頃は歩いたり走ったりというトレーニングが必要ではなかろうか。それもただ歩くだけではだめで、早く歩いたり重い荷物を背負ったり階段を上り下りしたりして心拍数を上げなければ効果が上がらない。地味だがヒンズースクワットなどで膝の廻りの筋肉を強化したり、近場の山に行く時はタイムを決めて登ったり、ペットボトルの水をたくさん入れてザックを重くしたりといった地道な努力が必要ではなかろうか。
先日のジャンダルムに参加されたお客様の一人は、きちんとトレーニングして準備して体調を整えてきたので歩きに余裕があり、技術力を要する岩場などでも余裕が出て、その結果安全につながっていた。体力があれば多少の技術不足を補うことができる部分も多いと思う。
昔から登山は「一に体力、二に体力、三に技術、四に装備」と言われてきた。昔取った杵柄は効かない。昔のイメージだけで山に行けば事故る。今現在の自分の体力、精神力を冷静に見極め、それに合った登山をしないと事故る。
ちょっとストイック的だが、最近のファション優先の軽いノリでやってくる若い人達や、相変わらず多い中高年層の事故に対し警鐘を鳴らす意味で書かせてもらった。
独断と偏見もあるだろうが、所詮「登山はつまるところ個人の趣味である」ということでお許し願いたい。
ちなみに白馬山荘に泊った翌日以降は雪倉岳~朝日小屋泊、朝日岳~五輪尾根~蓮華温泉下山という予定だったが、悪天候のため朝日岳方面は中止して白馬大池から直接蓮華温泉に下って泊り、ゆっくりと温泉三昧してきた。
蓮華温泉はいつも4月上旬にバックカントリーツアーで来るのだが、周囲の様子や雰囲気がまるっきり違うのでびっくりする。
8/4 晴れ
朝3時過ぎに家を出て、5時半頃立山駅でお客様と合流。この日は室堂から別山乗越を越えて昼頃剣沢小屋着。午後は飲む。
8/5 晴れ
朝3時15分に出発。空は満天の星。この日は最高の天気だった。やっと夏が戻ってきたような感じ。おかげで順調に剣岳登頂。お客様も大満足の様子。
剣沢小屋に戻ってお昼を食べた後、お客様と別れ、自分はいったん雷鳥平に下って今度は一ノ越山荘に向う。夕方次のお客様と合流。
8/6 雨
昨日とは打って変わって朝から雨模様の天候。カッパ着用。雄山、真砂岳、別山と立山を縦走して昼過ぎに再び剣沢小屋に入る。夕方には雨は上がり、剣も姿を見せた。
8/7 晴れ
今日も朝3時過ぎに出発。夜中に雨が降ったため岩が濡れてて難易度が上がったが、今回も無事に登頂。昼に剣沢小屋に戻って昼食後、お客様を室堂のロッジ立山連峰まで送り届けて業務終了。帰宅。長い4日間であった。
※写真と文章は合ってません。