上高地から集合場所の西穂山荘に向う時はこんなに素晴らしい青空だったのだが、
oh my God! あんだけずっと天気良かったのに翌日は朝からガス模様。なんで?
岩が濡れて滑りやすかったが、なんとか無事西穂独標まで行ってこられた。
午後は、相変わらずぐちゃぐちゃした道を縦走して焼岳小屋へ。途中から本降りの雨になり、夜中はかなり激しい風雨。
夜、小屋の人とかと厨房で立ったまま酒を飲んでたら、寝静まったと思ったお客さんが現れて、「今建物が揺れたんだけど。」と言ってきた。自分達は酔ってたし、立ってたので全然わからなかったが、この時が大町や白馬で頻発した地震だったようだ。テレビもないし携帯もつながらないので情報が入ってこない。
朝起きても風雨はおさまらなかったので出発を見合わせたかったが、後のお客さんのスケジュールが決まってるのでやむなく焼岳登頂はあきらめて上高地に下山する。すると雨は上がり、日が射してきた。しかも明日からはまた晴れが続くらしい。まったく皮肉ですなあ。
上高地から新村橋をめざす。一昨日歩いたばかりだし、いつ来ても嫌になる。
しかしいい天気だ。
橋を渡り、パノラマコースに入る。
パノラマコースの途中から中畠新道に入る。メッチャ急な登りで、ここに比べればアルプス三大急登なんか全然たいしたことない。おかげでふくらはぎが疲れた。
パッと視界が開け、奥又白池に到着。なんて素敵なところだろう。目の前には前穂東壁~北尾根が迫る。しかし、数日前にこの一帯で事故が多発したのでなんとなく不気味に感じてしまった。
ここでテント泊。
天気がいい時は朝方の冷え込みが厳しい。テントの内側には霜が着き、葉っぱにも霜が降りてた。気温は氷点下2度ぐらいだろうか。夏用のシュラフだったので夜中寒くてあまりよく寝られなかった。
今日もいい天気。
奥又尾根からA沢をめざす。登るにつれ前穂東壁がぐんぐん迫ってくる。
A沢はぐずぐずで浮石がひどい。全部浮石と言っても過言ではない。距離は長くないが、緊張を強いられる。あまり行きたくないところだ。
無事、前穂山頂に到着。
見下ろすと奥又白池がよく見えた。池畔には昨日から不在の黄色テントが1張りあってずっと気になっていたのだが、我々が頂上に立った時もまだあった。あのテントの主は無事なのだろうか・・・
その後は重太郎新道を下って上高地に下山。途中の岳沢小屋は改築後初めて寄ったが、とても綺麗だった。一度泊ってみたい。
好天の3連休。
山はすごい人出の3連休。
山岳遭難事故多発の3連休。
であった。
初日、上高地から水俣乗越を越えて天上沢に入り、しばらく下ったところにテントが1張り。「ん?こんなところにテント張るの?」と不審に思ってたら、その近くにオバさんが2人いて、「赤いヤッケを着た男性は見かけませんでしたか?」と聞いてきた。何か事情がありそうだなあと思いながらも、深くは聞かずそのまま通り過ぎた。その直後、長野県警のヘリ「やまびこ」が突如東鎌尾根を越えて頭上にやってきた。先の方でUターンして低空飛行でゆっくり進入してきたと思ったら先ほどのテントの上でホバリングして救助隊員が降下。やはりテントのパーティの誰かかが事故ったようだ。無線を聞いてたら肋骨を骨折した模様。我々に聞いてきた赤いヤッケの男性とはガイドのことだったようで、救助要請するため携帯がつながる稜線まで上り返しに行ってたらしい。
夜は冷え込んだ。翌朝2時過ぎに起きたらテントの外側は霜が下りて真っ白。
登ってる最中もところどころにつららが垂れ下がっていた。
でも日中は素晴らしい晴天。
それにしても北鎌尾根はすごい人。北鎌沢出合のテント数だけでも15張りはあったと思うし、貧乏沢から来た人達も入れればこの日だけで何人が登ったんだろう。
幸い北鎌では事故がなかったようだが、この日は前穂北尾根や屏風岩などで事故があり、おそらく県警ヘリは途中の燃料補給などはあったろうがほとんど1日中飛んでたんではなかろうか。夕方日没間際までレスキュー活動していた。
我々も順調に槍ケ岳に登頂。ところが写真のように大渋滞で、下るのにえらい時間がかかった。
当然槍ケ岳山荘も大混雑。やれやれ。
こっち方面の山は冬のB.C以来。ましてや夏は久しぶり。
秋雨前線が南下中で、昼頃からこの辺にさしかかるような予報。出発時はまだ曇りだったが、登るにつれ時折霧雨が降るようになってきた。そしてこの日は雷がくる確率が高かったので、出発の時から「早く行かなきゃ」という心理状態になっていたと思う。しかしそこでペースを早めようもんなら途端にお客様の息が上がり、バテバテになりかねないのでいつものようにゆっくりゆっくり歩く。
白馬大池のハクサンコザクラはまだ咲いていた。
霧雨が降ったりパーっと明るくなって陽射しが出たりを繰り返していたが、船越ノ頭を越え小蓮華岳を通過する頃ついに雷鳴が轟いた。雨も止むことがなくなり、「雷が近づいてきたらどこに避難しようか」を常に気にしながら進む。お客様には申し訳ないが、少しペースを早め、休憩の頻度も少なくして急いでもらう。
三国境から白馬岳頂上への最後の登りにさしかかる頃からは冷たい雨が本降りになり、「頼むから雷さん近づいてこないでくれ!もうちょっと待ってて!」と念じながら登る。皆夜行の寝不足も重なってかなり辛そうだったが、なんとか無事頂上に立ち、白馬山荘に転がり込む。
過去何度か雷では危険な目に遭っているので今回も少し早く歩いてもらったが、途端に「今日苦しかったのはペースが速かったからじゃ。」と文句が来る。皆の安全のためにペースを早めたのだが、なかなか理解してもらえない。場合によっては早く歩かないといけない時もあるのである。ヨーロッパなどでは【スピード=安全】という概念が確立されてるようだが、日本ではまだまだである。
夜行で来ていきなり標高1500mぐらいのところからスタートしてその日のうちに3000m級の山まで登るという日程の組み方も問題あるだろうが、基本的に体力不足の方が多いように思う。特に中高年層。高齢になればなるほど日頃のトレーニングが大事になってくると思うのだが、聞くと「山に登るのは3ヶ月ぶり。北アルプスは今シーズン初めて。」とかいう方がけっこういる。完全にナメてる。週に1回、近場の山でも行ければ最高だが、それができなければせめて1ヶ月に1回は山に行き、そして日頃は歩いたり走ったりというトレーニングが必要ではなかろうか。それもただ歩くだけではだめで、早く歩いたり重い荷物を背負ったり階段を上り下りしたりして心拍数を上げなければ効果が上がらない。地味だがヒンズースクワットなどで膝の廻りの筋肉を強化したり、近場の山に行く時はタイムを決めて登ったり、ペットボトルの水をたくさん入れてザックを重くしたりといった地道な努力が必要ではなかろうか。
先日のジャンダルムに参加されたお客様の一人は、きちんとトレーニングして準備して体調を整えてきたので歩きに余裕があり、技術力を要する岩場などでも余裕が出て、その結果安全につながっていた。体力があれば多少の技術不足を補うことができる部分も多いと思う。
昔から登山は「一に体力、二に体力、三に技術、四に装備」と言われてきた。昔取った杵柄は効かない。昔のイメージだけで山に行けば事故る。今現在の自分の体力、精神力を冷静に見極め、それに合った登山をしないと事故る。
ちょっとストイック的だが、最近のファション優先の軽いノリでやってくる若い人達や、相変わらず多い中高年層の事故に対し警鐘を鳴らす意味で書かせてもらった。
独断と偏見もあるだろうが、所詮「登山はつまるところ個人の趣味である」ということでお許し願いたい。
ちなみに白馬山荘に泊った翌日以降は雪倉岳~朝日小屋泊、朝日岳~五輪尾根~蓮華温泉下山という予定だったが、悪天候のため朝日岳方面は中止して白馬大池から直接蓮華温泉に下って泊り、ゆっくりと温泉三昧してきた。
蓮華温泉はいつも4月上旬にバックカントリーツアーで来るのだが、周囲の様子や雰囲気がまるっきり違うのでびっくりする。