2008年9月16日 (火)

2008/09/13~15 槍ケ岳北鎌尾根ガイド

20080914_162 天候良し、お客様の体調良し、ガイドの体調まあまあ、ということで好条件が揃い、北鎌尾根を完登することができた。しかも予定より早く15時前に槍の頂上に抜けることができた。この日の北鎌尾根はラッシュで、我々の後ろにも続々とパーティが続いた。そして槍の頂上も満員御礼。槍ケ岳山荘はもっと満員御礼。ということで殺生ヒュッテにエスケープ。あの喧騒が嘘のような静かな小屋であった。

今回のアプローチは上高地~槍沢~水俣乗越~天上沢~北鎌沢右俣。他にも湯俣からと貧乏沢からと2つのアプローチコースがあり、体力度・困難度・交通の便などでそれぞれ長所短所があるが、それらを総合してみるとこの水俣乗越からのアプローチが一番楽であると自分は思っている。

天狗の腰掛の手前では、お客さんが腐った木の根を掴んで滑落しそうになるという「九死に一生スペシャル」があったが、タイトロープでビレーしながらの行動だったのでロープを持っていた左手にちょっとショックが来ただけで特に問題はなかった。本人にとってはちょっと刺激が強かったらしく、「あー死ななくて良かった。」とか「あー命拾いした。」とか「あーやっぱり北鎌尾根ね。」とか盛んにいろんなことを言っておられた。

P12からP13付近は相変わらず岩が脆く、自分自身もこの日一番緊張を強いられた。部分的にタイトロープからスタカットに切り替えてお客様を引き上げ、P13でホッと一息入れているとお客様が「あそこにザックが落ちてる。」と言うではないか。確かにP12とP13の間の千丈沢側のルンゼにザックとその中身が散乱している。見た瞬間、「あーこれは誰か落ちたのかもな。」と思ったが、もしかしたら休憩の時にザックを落としてしまったのかもしれないし、こちらも先を急がなければならなかったのでそのままそこを離れた。しかし、昨日帰宅後にわかったことだが、やはりそれは事故であった。県警ヘリに収容されたのが昨日なので、我々が目撃した時にはまだそのザックの傍らに遺体があったことになる。遠くてわからなかったが。亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

北鎌平にある大岩には”ココはキタカマ平”と朱書きしてある。3年ぶりにここを訪れたのだが、だいぶ風雪風雨に叩かれて字が薄くなっていた。この文字は案内人組合の先輩であり、長いこと常駐隊の隊長なども歴任され、「北鎌の神様」と言われた故・勝野銀一さんが書いたものである。4~5年前、何者かが北鎌尾根上のあちこちに赤いペイントでマーキングをして問題になり、それを消す作業に出かける際にも「おい水越君、あそこの”ココはキタカマ平”という文字だけは消すなよ。あれは俺が書いただ。あれは冬にここを登ってきた野郎どもが唯一現在地を確認できる目標物なんだ。」と言っていた。生前、勝野さんは自分をよくかわいがってくれて、自宅に招かれて酒を飲みながら北鎌尾根や裏銀座のこと、猟師をやっていた頃の話しや数々の救助活動の話しを聞いたり、また自分の鉄砲で撃って獲ってきた猪の肉などをお裾分けしてくれたりした。そんな生前の勝野さんを思い出しながら歩いていたら妙に感傷的になってしまった。お客さんや他のパーティもいたので声には出さなかったが、心の中で「おーい勝野さーん、来たぞぉー!」と叫んでいた。

北鎌尾根はやはり大変なコースであるというのを再認識した。体調、装備、天候の全てがベストの状態でないと行ってはいけないコースであると思う。ちなみにロープを使用しているパーティは我々以外では見なかった。

2008年9月 8日 (月)

2008/09/05~07 甲斐駒・仙丈ガイド

20080906_22 相変わらず不安定な天気。でも今回は甲斐駒・仙丈とも早朝出発だったので雨には遭わず、カッパは1度も着なくてすんだ。「上空に寒気が入り、」というパターンが続いてる。そのため夜は満天の星、朝は快晴でも午前9時を過ぎるととたんにガスが湧き始め、あっという間に展望がなくなる。秋のカラっとした晴天が待ち遠しい。

2008年9月 4日 (木)

2008/09/02~03 剣岳ガイド

20080902_73 ハハっ、また剣岳。今シーズン4回目でーす。去年から通算して何回行ってるんだろう。去年も「剣岳は俺の庭」と言っていたが、もはや俺の玄関って感じ。

山の上ではほんの少しではあるが秋が訪れはじめていた。

朝4時前に出発したのだが早々にトラブル発生。1時間ロスしてしまった。10時から雨の予報が出てたので焦っていたのだが、なんとか難所を通過し終えてから雨が降り出してくれた。ぎりぎりセーフ。今回はお客様の人数が多く、足並みもばらつきがあり、申し訳なかったが1名だけは剣山荘のところまでで引き返してもらった。前日も含めて歩き方を見ていると、とてもじゃないがその先の岩場はまともに歩けないと判断。たとえ歩けたとしてもすごく時間がかかってしまい、何時に帰れるかわからない。「もしどうしても登りたいのであればツアー登山ではなく、個人的にガイドを雇ってマンツーマンで行くようにした方がいいですよ。あなたの足ではこういう難しい山のツアー登山は無理です。」と厳しい言い方ではあるがアドバイスをして引き返させた。本人は悔しそうであったが、言うこっちの方も辛い。ちなみにその方は70歳オーバー。70を越えてるからどうのこうのということではない。最近は70以上の年齢の方は当り前のようにいる。そのこと自体は全く問題ないのだが、困ってしまうことは自分の脚力・体力・体調を自覚せず、むしろ過信をしてしまい、そして意地を張ってしまうことである。こういうのが一番困るし、遭難事故の元凶にもなっている。だけど、これからは高齢登山者が増加していくんだろうな。それに伴って事故も増えるんだろうなあ・・・

2008年9月 1日 (月)

2008/08/30~31 剣岳ガイド

20080831_92 今シーズン3回目の剣ガイド。頂上に立ったのは2回目だが。

30日は大雨の中、剣山荘に向う。とても明日は無理だろうなあと思ってたら夜には雨が上がり、3時に起床して外を見たら星が出てたので予定通り出発。朝のうちはまだ岩が濡れていて少々スリップしやすかったが、好天のおかげでみるみる岩が乾き、とても気持ちの良い山行になった。本当に思いのほか天気が良くなりラッキー。 我々は一番にスタートしたので渋滞に巻き込まれなかったが、下山の時にはタテバイに行列ができていた。週末だったためかなり混雑していたようだ。

2008年8月25日 (月)

2008/08/22~24 笠ケ岳ガイド

20080822_52 なにしろ天気が悪い週末であった。笠新道から上山し、鏡平から下山するコース。22日の笠新道の登りの時だけはまあまあの天気。夕方は写真のように山荘から槍穂高が見えた。しかし姿を現したのはこの時だけで、翌日は雨。24日は焼岳に登る予定だったが、やはり夜半からすごい雨で、川も増水しており、このまま出発すると大雪渓のようになるということで中止。

22日は自分の知ってる限りでも(無線を聞いてる限りでも)穂高方面の岐阜県側で2件、長野県側で1件の事故があったようだ。そのうち岐阜側の1件は西穂~奥穂間の間ノ岳付近で起きた滑落死亡事故で、隊員が現場で収容袋に入れたものの県警ヘリがガスのためなかなか進入できず、ずーっと遭対無線が騒がしかった。何度もトライしていたが、結局時間切れのためその日はピックアップできなかったようだ。 しかし事故が多い。事故だらけだ。こんなに事故が多い年は過去にもないだろうな。自分も含めてだが、ほんとに気をつけて山に入ってほしい。一番いけないのは自分の体力・技術を過信すること。あきらかに自分の実力に見合ったコース・日程でないことが多い。トレーニング不足の方が多い。もっと謙虚に謙虚に。

2008年8月 9日 (土)

2008/08/06~09 南ア 赤石・荒川三山ガイド(Part2)

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今度は逆コースで1泊少ない。

8/6 朝、次のお客様一行のバスが民宿前まで来てくれたのでそれに乗って畑薙第一ダムに向う。ここのところ毎日雷が来ており、今日も朝から妙に蒸し暑くて雲が落ち着かない。雷が来るのは必至。大汗かきながら千枚小屋に向って登り始める。夕べの酒が残っていて苦しかったが、大汗と一緒にアルコールも抜けてくれた。小石下で昼を食べる頃から遠くでゴロゴロ鳴り出す。次第に音が近付きあたりも暗くなってきたので覚悟を決めてザックカバーを着け、カッパをすぐ着れるように準備したが結果的にはほとんど雨は降らず、そのうち雷鳴も止んでしまった。ラッキー。しかし、今日の登りはやけにきつかった。

8/7 午前中はいつも天気が良い。千枚小屋を出てほどなく森林限界を越えると背後に綺麗な富士山の姿。このコースはいつも富士山に見つめられているようだ。雨のせいか時期の問題か千枚岳・荒川前岳のお花畑とも3日前に比べるとちょっと萎れ気味。この日は荒川小屋まで。やはり夕方近くなって遠くでゴロゴロ聞こえた。

8/8 今日は赤石岳を越え、椹島までいっきに下るやや長丁場の行程。朝は槍穂高方面が見えた。赤石岳からの下りはちょっと足場が悪いが、赤石小屋から下は歩きやすい。樹林帯の中で日陰なのだが、下るにつれて気温が上がって暑いこと。椹島には生ビールがあるので嬉しい。

8/9 朝一のバスで畑薙第一ダムに移動し、ツアーのバスに乗り換えて民宿ふるさとまで送ってもらう。自分の車に乗り換え、行きと同じ井川雨畑林道で山梨に出て8日ぶりに白馬に帰る。下界は暑い。

2008/08/01~05 南ア 赤石・荒川三山ガイド(Part1)

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この1週間で南ア南部の椹島を基点とした赤石岳~荒川三山~千枚岳のコースを時計回り、反時計回りそれぞれ1周してきた。長かった。

8/1 まず椹島までが遠い。山梨県の早川町から峠越えして井川に出る「井川雨畑林道」を通って畑薙第一ダムに向かう。道幅が狭くて急カーブの連続、一部未舗装の所もあったりして井川に出た時は疲労を覚えたが、静岡回りで来るよりはだいぶ時間短縮になる。最終15時半発の東海フォレストのバスに乗って椹島でお客様と合流。

8/2 今回は「ゆったり赤石・荒川三山」という謳い文句なので各駅停車で小屋に泊っていく行程。今日は赤石小屋まで。花も眺望もなく単調な登りだったが昼頃には着いてしまった。小屋は満員に近く、頭と足を互い違いにして寝る。

8/3 天気は良い。朝焼けの赤石岳、富士見平からの富士山が綺麗だった。富士見平からやっと花が出てくる。赤石岳登頂後、昼過ぎに荒川小屋着。今日も半日仕事。少し下にある水場で水浴びをし、その後は宴会。小屋はけっこう空いていた。

8/4 昨日、一昨日に比べて朝の冷え込みがなく湿度も高く感じた。赤石岳には朝から雲がかかっている。早めに次の千枚小屋に入りたかったが、今回のコースのハイライトでもある荒川前岳のお花畑ではゆっくりと時間をかけて通過。ここのお花畑は南アルプスでも随一のスケールと種類の多さで、時期もちょうど良かった。千枚岳周辺のタカネビランジを堪能して千枚小屋に昼過ぎに到着。案の定、15時頃から雷雨になる。

8/5 椹島に下山。4日ぶりに風呂に入り昼食後畑薙ダムに移動。お客様と別れて自分は井川の「民宿ふるさと」に行って泊る。この日も午後は雷雨。ここの宿のご主人は鉄砲打ちをやっているらしく、夕食には鹿の刺身や猪の肉が出た。同じく山から下りてきた同宿の方達と酒を飲み過ぎて夜中激しい頭痛に見舞われる。

2008年7月31日 (木)

2008/07/27~30 剣岳ガイド2連チャン

20080730_12昨年、飽きるほど剣のガイドに行ったが、また今年もスタートした。しかも2連チャンで。

7/27 朝3時に家を出て立山駅でお客様達と合流。室堂から一ノ越、雄山、真砂、別山と縦走して剣沢小屋に入る。別山の登りに入ったところで雨が降り出し、そして雷も鳴り出す。朝から雷注意報が出ていたのですっごく気にしていたが、やはり捕まってしまった。モロに稜線上だったので大いにビビってヘソを隠した。過去何回か雷で死にそうになってるので雷恐怖症である。夕方一旦雨が上がって剣も姿を現した。

7/28 夜半から再び強い雨と風。3時半出発の予定だったが30分遅らせる。相変わらず風雨強かったがとりあえず剣山荘まで行くことになる。しかし、出発してすぐまた雷が鳴り出し、剣山荘まで行ったもののその先はとても無理ということで剣沢小屋に引き返す。その後雷雨風は激しさを増し、お客様もきっぱりと諦めがついたようだ。雷雨が小康状態になったので室堂に向けて行動し、昼前にロッジ立山連峰に入る。午後は装備について講義し、その後は温泉&酒。

7/29 晴れてはいないが天候は落ち着いたようだ。朝食後、東京に帰るお客様達と別れて室堂ターミナルで次のお客様と合流。今度は立山縦走はなく、直接別山乗越を越えて剣沢に向う。昼前に剣沢小屋着。昼食後、偵察も兼ねて一服剣まで往復する。その後は酒。

7/30 3時起床。満天の星空のもと3時半出発。順調(?)に難所を越えて7時50分に登頂。相変わらずタテバイとかは見ているこっちの方が怖い。それにしても素晴らしい天気。ようやく正しい日本の梅雨明け10日の夏山が来たように思えた。鹿島槍の八峰キレットで事故があり、県警ヘリが慌しく行ったり来たりしていた。剣沢小屋に無事下山して昼食後、自分はお役目ゴメンということでお客様達と別れて下山。

2008年7月25日 (金)

2008/07/21~24 越後駒・平ケ岳・会津駒ガイド

20080723_62 フェーン現象のため異常な蒸し暑さの3日間だった。特に22日の越後駒ケ岳の時は参った。よく熱中症でぶっ倒れなかったなってくらい。自分もこんなに暑くてたくさん水を飲んだ山行は記憶にない。3リットルは飲んだ。頂上直下の駒の小屋に水が出てなかったらエラいことになってただろう。暑い、長い、ヤブっぽい、ヘビが多いの4拍子で、この越後駒の印象はすっかり悪くなってしまった。

平ケ岳は、地元の宿に宿泊し、なおかつ10人以上揃って初めてその宿のマイクロバスで入れるという中ノ岐林道からのルート。このルートは鷹ノ巣ルートに比べて短くて済む。かつて皇太子様もここから登っている。

会津駒ケ岳は前夜まで激しく雨が降ってたのでどうなるかと思ったが、朝には雨も上がって晴れてくれた。しかしやたらと蒸し暑かった。この山は人気が高く、ツアーのグループは我々ぐらいだったが一般の登山者はひっきりなしに登ってきた。

帰り、檜枝岐から小出に出るルートは行きとは逆の田子倉湖経由だったが、前日通過した尾瀬御池~檜枝岐間の国道352号線で登山ツアーのバスが転落するという事故があってびっくり。

2008年6月29日 (日)

2008/06/28 三ツ峠クライミング講習会

20080628_28 三ツ峠でのクライミングは久しぶりだ。天気は曇りで、残念ながら富士山を眺めながら爽快なクライミングというわけにはいかなかった。参加されたお客様はハーネス付けるのが初めてとか超久しぶりで忘れてしまったという方ばかりだったので、午前中はハーネスの付け方から始まり基本的なロープワークなどを行う。ところが虫がすごくて、その場でじっとしていると集中攻撃を食らうのでロープワークもそこそこに早速トップロープを張って登っていただく。まずは誰もが最初に登る「一般ルート右」。全く初めてのクライミングという方も無難に登れた。次はそのすぐ左側の「一般ルート中央」。ここは先ほどよりやや難しい。やはり途中で手こずる方が多かった。このルートを登り始める頃、30人近い団体が来て右フェースの下部には簾のようにロープが垂れ下がり、わんわんの騒ぎ。もはやどのルートにもトップロープが張られてしまったため他のルートに移動する気も起きず、ずっと一般ルート中央で練習した。最後に懸垂下降の手順を説明して、降ってきた雨に追われるように下山。今回は虫と混雑で参った。最後はその30人ほどの団体に自分のロープを間違えて持っていかれるというオチも付いた。追いかけて取り返したが。